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 欅刳盛器 「小軌道」



       




■ 着想
 材料の欅は知人から頂いたものであるが、長い間アトリエの隅で時の熟するのを待っていたような気がする。気力の充実を待って、この欅の塊から何かを掘り出そうと決心。

■ 胎
 偶然入手した欅の塊であるが、3年ほど仕事場の片隅に置かれていた。乾燥の進み具合などを考慮して、丸鑿で表面を掬い進み、木目のありようを確認。思いのほかきれいであった。木目を生かしつつ、どっしりとした盛器をと考えた。木の厚12pも切断可能という強力なジクソーで外形を切り出し、後は丸鑿、小道具(能面制作で使う鑿と彫刻刀の中間ぐらいの刃物で、基本的には上部を叩いたりせずに手の力で掘り進む)、四方ぞり鉋(刃を支える台木が四方にそりあがっており、全体に曲面をなしている。主に曲面カーブを内側から削り出すときに使う。当然カーブの種類によって、曲面の半径によってさまざまな大きさとカーブの鉋が要求される)。この繰り返しの中でやっと胎を得た。

■ 技法
 できる限り木のありようを生かすために単純にと心がけた。とくに見込み部分は動きのあるものにしたかった。螺鈿(ここでは玉虫貝微塵)の線表現さらに金の置き平目(金や銀の粒をつぶして得られた比較的大きさを持った平面的な金粉を一つずつ置く)。全体は木目を生かしながら摺り漆仕上げ。

■ サイズ
 47×32×5p

■ コメント
 長い時間を吸い込んだ木の生きてきた記憶と時間にどこまで迫れたろうか・・・。

■ 販売価格
 68万円